要約
労働経済学や失業研究の第一人者であり、「幸福の経済学」を提唱して公共政策の目的を幸福の増進に置くべきだと説いたイギリスの経済学者である。
詳細解説
人物・研究上の位置づけ
リチャード・レイヤードは、労働経済学や失業研究で知られる経済学者であり、幸福の経済学を公共政策に結びつけた代表的な人物である。GDPや所得だけでは社会の成功を測れないとし、政策の目的を人々の幸福や精神的健康の向上に置くべきだと主張した。心理学、経済学、公共政策をつなぎ、幸福を個人の気分ではなく社会設計の目的として扱った点に特徴がある。
代表的な理論・功績
レイヤードは、所得、仕事、家族、健康、コミュニティ、自由、価値観などが幸福に与える影響を整理し、幸福を政策的に扱うための枠組みを示した。また、所得競争や地位財競争が幸福を損なう可能性を指摘し、精神的健康と社会的信頼を重視した。イギリスにおける心理療法普及政策にも影響を与えた点で、学術と実務をつないだ人物である。
混同しやすい概念との違い
レイヤードの幸福論は、個人の内面トレーニングだけを重視するものではない。ポジティブ心理学が個人の強みや心理的資源に注目するのに対し、レイヤードは社会制度、雇用、精神医療、教育、信頼といった環境条件を重視する。個人の努力だけではなく、社会設計として幸福を考える点に特徴がある。幸福を自己責任だけで説明する議論とは明確に異なる。
科学化幸福論との関連性
本サイトにおける位置づけ
本サイトでは、レイヤードを、幸福を経済学・政策・社会設計の側面から捉える人物として位置づけている。幸福モデル比較においては、PERMAやSWBが個人の心理を中心に扱うのに対し、レイヤードは幸福を支える生活条件と社会環境に焦点を当てる役割を持つ。個人の幸福を、社会構造や競争環境の中で考えるための重要人物である。
幸福論における意味
レイヤードの視点は、幸福を自己責任だけで語る危険を抑える。人は、健康、雇用、人間関係、精神的支援、社会的信頼に強く影響される。したがって、幸福を高めるには、自分の心を整えるだけでなく、どの環境に身を置くか、どの競争から降りるか、どの関係を守るかを考える必要がある。所得や地位を追う努力が、かえって精神的自由や関係性を損なう場合がある点も重要である。
読み解く際の注意点
レイヤードの理論を読む際には、所得や経済成長を否定していると単純化しないことが重要である。彼が批判するのは、所得や地位を幸福の唯一の尺度とする考え方である。また、公共政策の議論を個人の生活に適用する場合には、自分がコントロールできる領域と、社会制度として変えるべき領域を分けて考える必要がある。個人の努力と環境設計を混同しないことが大切である。
References: Layard, R. (2005) "Happiness: Lessons from a New Science"

