要約
意識の量は、システム内の情報がいかに「統合」されているかという数学的な指標(ファイ:Φ)によって決定されるとする意識理論である。
詳細解説
学術的・科学的定義
統合情報理論(Integrated Information Theory: IIT)とは、意識を、システム内の情報がどれだけ分化し、かつ統合されているかによって説明しようとする意識理論である。ジュリオ・トノーニによって提唱され、意識の量をΦ(ファイ)という概念で表そうとする。単純に情報量が多いだけでなく、その情報が切り離せない全体として統合されていることが意識に関わると考える。
主要な機能・メカニズム
IITでは、意識は外部への出力や言語報告だけでなく、システム内部の因果構造によって特徴づけられる。あるシステムが多様な状態を取り得て、しかも各部分が独立しているのではなく相互に統合されている場合、そのシステムには一定の意識があるとされる。この理論は、人間の脳だけでなく、動物、人工知能、睡眠、麻酔状態などの意識を考える際にも参照される。
混同しやすい概念との違い
IITは、グローバル・ワークスペース理論とは異なる。GWTが情報が脳全体に共有され、利用可能になる機能を重視するのに対し、IITはシステム内部の情報統合の構造を重視する。また、単なる脳活動量の理論でもない。活動が多いか少ないかではなく、情報がどのように分化し、統合されているかを問う理論である。
科学化幸福論との関連性
本サイトにおける位置づけ
本サイトでは、統合情報理論を、意識やクオリアをめぐる科学的アプローチの一つとして位置づけている。幸福が単一の刺激や快感ではなく、身体、記憶、価値観、関係性、注意、意味が統合された主観体験として現れることを考える補助線になる。
幸福論における意味
IITそのものは幸福理論ではないが、幸福を考えるうえで「統合」という視点は重要である。仕事、身体、人間関係、価値観、記憶がばらばらに矛盾していると、快楽があっても深い納得感は得にくい。逆に、自分の経験や価値観が一つの人生物語として統合されると、主観的な充足感は強まりやすい。
読み解く際の注意点
IITは意識研究の有力理論の一つだが、決定済みの答えではなく、批判や論争も多い。幸福への応用も比喩的・補助的に扱うべきであり、Φが高ければ幸福だという意味ではない。ここで重要なのは、意識や幸福が単一部品の足し算ではなく、複数要素の統合として現れるという見方である。
References: Tononi, G. (2004) "An information integration theory of consciousness", Oizumi, M., et al. (2014) "From the phenomenology to the mechanisms of consciousness: Integrated Information Theory 3.0"

