カテゴリー

ケネス・パーガメント

ホーム用語集ケネス・パーガメント
領域: 心理学・行動経済学・社会学カテゴリー: 提唱者・組織同義語: Kenneth I. Pargament, 宗教的コーピングの研究者

要約

宗教やスピリチュアリティが、人生のストレスやトラウマに対する「対処法(コーピング)」としていかに機能するか、あるいは逆機能するかを解明した心理学者である。

詳細解説

学術的・科学的定義

ケネス・パーガメントは、宗教心理学、臨床心理学、スピリチュアリティ研究の領域で、宗教や信仰がストレス対処、トラウマ、喪失、病気、人生の危機においてどのように機能するかを分析した心理学者である。幸福論の文脈で重要なのは、彼が宗教を単なる信念体系や文化的所属としてではなく、現実の苦しみに対処する心理的プロセス、すなわち宗教的コーピングとして捉えた点である。人は危機に直面したとき、出来事の意味、自分の責任、世界の公正さ、神や超越的存在との関係を問い直す。パーガメントは、その問い直しが人を支える場合もあれば、逆に苦しみを深める場合もあることを明確にした。信仰は常に幸福に良いのではなく、どのように用いられるかが重要である。

主要な機能・メカニズム

パーガメントの研究の中心には、ポジティブな宗教的コーピングとネガティブな宗教的コーピングの区別がある。ポジティブな宗教的コーピングでは、苦難の中に意味を見いだす、神や大きな存在に支えられていると感じる、共同体から支援を得る、赦しや希望を通じて回復する、といった働きが見られる。一方、ネガティブな宗教的コーピングでは、自分は罰を受けている、神に見捨てられた、悪しき力のせいだ、信仰が足りないから苦しむのだと解釈し、罪悪感、怒り、孤立が強まる。パーガメントの貢献は、信仰を一括して良い悪いで評価せず、危機における意味づけの質として分析した点にある。臨床場面では、クライアントの価値観や信念体系を無視せず、回復資源として扱う必要がある。

混同しやすい概念との違い

混同しやすいのは、パーガメントの研究を、宗教は幸福に良いという単純な主張として読むこと、または宗教は非合理だから心理支援から排除すべきだと考えることである。彼の視点はそのどちらでもない。信仰、スピリチュアリティ、価値観は、人が苦しみを解釈する深い枠組みであり、そこを無視すると支援は表面的になる。しかし、宗教的意味づけが罪悪感や自己責任化を強める場合には、慎重な再構成が必要である。また、宗教を持たない人にも、人生の意味、究極的関心、価値の軸は存在する。パーガメントの重要性は、幸福を気分の良さだけでなく、苦しみをどう意味づけ、どのような価値体系で支えるかという問題へ広げた点にある。

科学化幸福論との関連性

本サイトにおける位置づけ

本サイトでは、ケネス・パーガメントを、宗教スピリチュアリティ分析的思考、神への怒り、人格特性を幸福論に接続するための重要人物として位置づける。親記事では、信仰や宗教性を単純に肯定も否定もせず、人が困難をどう意味づけ、どう耐え、どう回復するかという観点から扱う。幸福は明るい感情だけではなく、喪失、病気、失敗、不条理に直面したときに、自分の世界観がどれだけ支えになるかにも関係する。

幸福論における意味

幸福論における意味は、人生の危機において、人は事実だけでなく意味によっても傷つき、意味によっても回復するという点にある。同じ出来事でも、自分は罰せられていると解釈すれば苦しみは深まり、支えられながら試練を通過していると解釈すれば耐える力が生まれる場合がある。これは宗教を持つ人だけの話ではない。誠実さ、家族、仕事、創造、美、学問、自然、共同体など、人は何らかの価値体系に依拠して苦難を解釈している。パーガメントの視点は、その価値体系を幸福のインフラとして点検する助けになる。

読み解く際の注意点

読み解く際には、苦しみに意味を見いだせばすべて解決するという危険な理解を避ける必要がある。深刻なトラウマや喪失に対して、早すぎる意味づけは本人を追い詰める。まず安全、休息、支援、悲しむ時間が必要な場合もある。また、宗教的・精神的説明が、現実の加害、貧困、医療、社会的支援の不足を隠す言葉になってはならない。本サイトの文脈では、パーガメントは、信仰や価値観を心理的資源として扱いながら、その負の側面にも目を向けるための人物である。幸福とは、苦しみを消すことだけではなく、苦しみを抱えたまま壊れない意味の枠組みを持つことでもある。


References: Pargament, K. I., et al. (1998) "The many methods of religious coping: Development and initial validation of the RCOPE"
この概念を、別の入口から読む

この用語に関係する悩みや生活上の違和感は、「悩みから読む幸福論」でも整理しています。また、周辺概念や関連する専門用語は、用語集全体から探すことができます。

シェアする