要約
価値観の構造を「終局的価値」と「手段的価値」に分類し、信念体系の研究において先駆的な業績を残した社会心理学者である。
詳細解説
人物・研究上の位置づけ
ミルトン・ロキーチは、価値観、信念、態度の構造を研究した社会心理学者であり、人間の行動を表面的な好みではなく、価値の優先順位から理解しようとした人物である。彼の研究は、個人が何を最終的に望み、そのためにどのような行動様式を重視するのかを区別し、価値観を測定可能な心理学的対象として扱った点に意義がある。
代表的な理論・功績
ロキーチの代表的功績は、ロキーチ価値尺度(Rokeach Value Survey)と、終局的価値・手段的価値の分類である。終局的価値は、平和、自由、幸福、自己尊重、知恵など、人生の望ましい最終状態を指す。手段的価値は、誠実、責任、論理性、寛容、勇気など、その目的に向かう行動様式を指す。この分類によって、目的と手段が混同される問題を分析しやすくなった。
混同しやすい概念との違い
ロキーチの価値理論は、性格診断とは異なる。性格がその人の反応傾向を示すのに対し、価値観は何を望ましいと見なすかを示す。また、シュワルツの円環モデルが価値間の対立・補完関係を構造化するのに対し、ロキーチは目的価値と手段価値を明確に分けた点が特徴である。価値観を単なるリストではなく、人生の優先順位として扱った人物である。
科学化幸福論との関連性
本サイトにおける位置づけ
本サイトでは、ミルトン・ロキーチを、価値観コンパスの基礎を支える重要人物として位置づけている。30の対立軸によって価値観を整理する際、何を最終目的にしているのか、何をそのための方法として使っているのかを分ける視点が不可欠である。ロキーチの理論は、価値観分析を単なる自己紹介ではなく、意思決定の設計図へ変えるための土台になる。
幸福論における意味
幸福を考えるうえで、目的と手段の混同は大きな問題になる。自由を得るために働いていたはずが、仕事の成果そのものが目的化する。心の平和を望んでいたはずが、効率や競争に追われる。ロキーチの理論は、いま自分が追っているものが本当に終局的価値なのか、それとも手段が肥大化しただけなのかを見直すための強力な補助線になる。
読み解く際の注意点
ロキーチの価値尺度を使う際には、価値を一度ランク付けして終わりにしないことが重要である。価値の優先順位は、年齢、経験、喪失、成功、家族状況によって変化する。また、社会的に望ましい価値を選ぶだけでは自己理解にはならない。本当に時間やエネルギーを使っている対象と、口では大切だと言っている価値のズレを確認する必要がある。
References: Rokeach, M. (1973) "The Nature of Human Values"

