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? 【前部帯状回】幸福は脳に蓄積される?「吻側前部帯状回」を鍛える脳科学的習慣術

幸福は脳に蓄積できる。前部帯状回を鍛える脳科学的習慣術と不幸を除去する4つのステップを解説。シナプス可塑性で幸福脳を物理的に育てるトレーニング。

【前部帯状回】幸福は脳に蓄積される?「吻側前部帯状回」を鍛える脳科学的習慣術

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幸福の実践③ ~「幸福を蓄積する脳」を育て、4つの手段を実行する(重要度★★★:MAX)

本記事では、上記の『幸福の実践③ ~「幸福を蓄積する脳」を育て、4つの手段を実行する』について、学術的な視点から解説を加えます。より踏み込んだ専門的な内容については、記事内のリンクから詳細記事をご覧いただけます。

この記事の要約

【ここを開く】
  • この記事は、強力な不幸感に対抗し、幸福を達成するための4つの具体的な実践手段を、脳科学的根拠に基づいた優先順位に沿って解説します。
  • 最優先すべきは、自分の耐性を理解した上での「不安・ストレス原因の除去」です。次にドーパミンに操られた「地位財」への執着を是正し、生活習慣を改善しなければなりません。
  • 最終目標は、趣味や感謝、利他行動などで「幸福な状態」を意図的に蓄積することであり、これにより幸福を司る「帯状回」などの脳構造自体を変えることが可能になります。

問題提起・結論・理由

【ここを開く】

問題提起
幸福感は繊細で維持が難しい一方、不幸感は非常に強力で頑丈、私たちの人生に大きな影響を与えます。この強力な不幸感に対し、私たちは「意志」の力で対抗しなければなりません。では、脳科学の知見に基づき、幸福になるために具体的に何を、どのような優先順位で実践すればよいのでしょうか? 本記事では、誰でも始められる4つの具体的なステップ(ストレス除去、意思決定の修正、ホルモン調整、幸福の蓄積)を整理して紹介します。
結論
結論は、4つの手段を優先順位に沿って実行することです。まずストレス源を低減・除去し、意思決定と習慣を修正します。最終的には「幸福の蓄積」により、脳の機能自体を幸福を感じやすい状態に育てます。
理由
なぜなら、幸福を奪う最大の要因であるストレスを除去することが最優先だからです。次に、ドーパミンに操られた「地位財」への執着は、私たちを不幸にするため修正が必要です。また、セロトニンなどのホルモンバランスは精神の安定に不可欠です。最終的に、幸福のトレーニングは脳の可塑性(帯状回など)に働きかけ、脳構造自体を変えうると期待されるからです。

科学的証拠も用いて詳しく解説します。

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幸福になるための4つの「制御手段」

優先順位 制御段階 具体的な活動内容 標的(物質・部位)
第1段階 不安・ストレスの解消 自己耐性の把握、環境からの離脱、DMNの抑制(瞑想) 恐怖回路・DMN
第2段階 意思決定の是正 地位財への執着の放棄、生活習慣(行動)の変更 報酬系前頭前野
第3段階 生理的調整 セロトニン安定化、オキシトシンの分泌促進 3大幸せホルモン
第4段階 脳機能の活性化 幸福体験の意図的蓄積、利他行動共感体験 前部帯状回・島皮質

幸福と不幸の感情は、極めて複雑なメカニズムによって生成されます。その背景には、神経伝達物質、脳の各部位の機能や神経回路(報酬回路、恐怖・不安回路など)、遺伝的要因自律神経系、ストレス反応、免疫反応、シナプス可塑性エピジェネティクス、ホルモン、グリア細胞、神経炎症ミトコンドリア、そして記憶を司る海馬など、多岐にわたる要素が関与しています。

注目しなければいけないのは、幸福感の維持がいかに困難であり、不幸感がいかに支配的であるかという点です。幸福感は、繊細なバランスの上に成り立つ一方、不幸感は、即効性、中期持続性、慢性持続性のメカニズムが複合的に作用し、強力な影響力を持っています。そして、この不幸感に対抗する術こそが、人間の「意志」の力です。

これら全体の概要的な解説を次回と次々回の記事で行いたいと考えています。(究極の目標は「死ぬ間際に幸福であった」と言える人生です。)

本稿では、その解説の前に、先ずは誰でも始められる対応策を以下の4つのステップに整理してご紹介します。

  1. 不安とストレス原因の除去
  2. 間違った意思決定と生活習慣の変更
  3. 神経伝達物質やホルモンの量の調整
  4. 幸福の蓄積による脳機能の活性化

この4つは優先順位も示しています。まず不安やストレスの低減・除去を試み、それが難しいなら次の段階を考えます。

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手段①:不安とストレス原因の除去

まず最優先すべきは、幸福感情を奪う「不安」と「ストレス」の除去です。

1. 自分の「ストレス耐性」を知る

まず、不安やストレスに対する耐性として、自分が「弱い」のか「普通」なのかを判断する必要があります。感受性が強いか(HSPなど)、神経症的な性格を持っているか、自己肯定感が弱いか、などが判断のポイントです。もし「弱い」と判定できる場合は、つらい状況が生じたら精神疾患を発症する前に、カウンセリングを受けるなどの特別な対応を検討すべきです。

HSPと神経症の傾向のある人は以下の記事を参考にしてください。

幸福は脳に蓄積できる。前部帯状回を鍛える脳科学的習慣術と不幸を除去する4つのステップを解説。シナプス可塑性で幸福脳を物理的に育てるトレーニング。
【HSP】「気にしすぎ」は脳の才能。感覚処理感受性(SPS)が生きづらさを武器に変える
「なぜ私だけこんなに疲れるの?」その答えは、あなたの脳の『情報処理の深さ』にありました。人口の20%が持つHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)の正体を科学的に解明。生きづらさを才能に変える、意外な「生存戦略」とは?
幸福は脳に蓄積できる。前部帯状回を鍛える脳科学的習慣術と不幸を除去する4つのステップを解説。シナプス可塑性で幸福脳を物理的に育てるトレーニング。
【神経症傾向】その不安は「才能」だ。ビッグ・ファイブが示す生きづらさを武器にする科学
「なぜ私だけこんなに不安なのか」その生きづらさの正体は、進化が与えた『天才の資質』かもしれません。幸福度が低いとされる神経症傾向を、創造性や危機管理能力という「最強の武器」に反転させる心理学メソッドを解説。

2. ストレス源を分類し「決断」する

次に、不安とストレスの原因を分析します。「影響が短期か長期か」と「意思決定で除去可能か不可能か」の2軸で分類してみましょう。

問題の核心は、「影響は長期だが、意思決定次第で除去可能」な領域にあります。 具体的に言えば、現在の仕事の状況や、配偶者との関係などです。この意思決定の要は「勝算」です。もし、その状況を客観的に見ても、将来的に自分が幸福になれる勝算が低いと判断されるなら、離職や離婚といった根本的な解決も、現実的な選択肢として検討する必要があるでしょう。

ただ耐え忍ぶだけでは、状況が改善しない可能性も考慮すべきです。 自分が幸福にならないと、他の人を幸せにもできません、幸福になる選択をしましょう。

3. 「除去不可能な問題」と付き合う

長期的に除去が不可能な問題(育児家族の介護や病気など)に対しては、上手く付き合うしかありません。 問題の核心は、「なぜ、自分だけこんな目に遭うのか」と考えてしまうことです。悩みを一人で抱えこまないことが何よりも重要です。そのうえで、自分の人生を生きる時間を少しでも確保してください。

不安とストレスに対処するキーワードは「今現在の幸せ」にあります。将来が不安かどうかではなく、「今ここにいる自分が楽しいか?」に評価基準をできるだけ変更すること。そして、DMN(デフォルトモードネットワーク)の暴走を抑えるため、瞑想や趣味などで集中する時間を1日20分でも確保することが重要になります。

→【補足記事1】DMN(デフォルトモードネットワーク)と幸福―瞑想が「心のさまよい」を抑える脳科学的メカニズム

影響期間 除去の可否 具体的な対象例 意思決定の指針
長期影響 除去可能 職業環境、
配偶者との関係
「勝算」を軸に根本的解決(離職・離婚等)を検討
長期影響 除去不可能 育児、介護、
慢性的疾患
独りで抱えず共有し、自分の時間を1日20分確保する
全般 日々の不安 「将来」から「今現在の幸せ」へ評価基準を変更

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手段②:間違った意思決定と生活習慣の変更

そうは言っても、不安やストレスは除去したくてもできない場合が大半です。 しかし、絶対に私たち自身が変えることができるものが2つあります。それは意識的な「意思決定」と「行動(習慣)」です。

間違った意思決定とは、主に「非地位財」よりも「地位財」に執着して生きることです。 地位財とは、お金、地位、役職、あるいはマイホームや高級車といった、他人との比較によって満足が得られるものです。地位財への執着は、ドーパミンに操られている証拠であり、相対比較や「慣れ」によって、人を不幸に陥れます。

ロバート・フランクの地位財と非地位財については以下で詳細に解説しています。

幸福は脳に蓄積できる。前部帯状回を鍛える脳科学的習慣術と不幸を除去する4つのステップを解説。シナプス可塑性で幸福脳を物理的に育てるトレーニング。
【地位財・非地位財】年収は無意味?ロバート・フランクが暴く「ヘドニック・トレッドミル」の罠
ロバート・フランクの地位財・非地位財(重要度★★★:MAX)本記事では、上記の『ロバート・フランクの地位財・非地位財』について、学術的な視点から解説を加えます。より踏み込んだ専門的な内容については、記事内のリンクから詳細記事をご覧いただけま...

なぜ人は意思決定を誤るのか?正しく意思決定するためにはどうすれば良いのかについては、以下で詳細に解説しています。

幸福は脳に蓄積できる。前部帯状回を鍛える脳科学的習慣術と不幸を除去する4つのステップを解説。シナプス可塑性で幸福脳を物理的に育てるトレーニング。
【現在バイアス】意思決定はなぜ間違える?行動経済学が暴く「幸福の自動破壊」メカニズム
「良かれ」と思った選択が、なぜ不幸を招くのか?その犯人は、脳に初期設定された「比較」「現在バイアス」「適応」という3つの罠でした。人生の目標、時間、予測を狂わせるメカニズムと、脳のバグを修正する具体的戦略を解説。
幸福は脳に蓄積できる。前部帯状回を鍛える脳科学的習慣術と不幸を除去する4つのステップを解説。シナプス可塑性で幸福脳を物理的に育てるトレーニング。
【幸福に向かう意思決定】人生を狂わす「正解」の罠。行動経済学が示す幸福に向かう意思決定の地図
シリーズの意図と全体マップ(重要度★★★:MAX)本記事では、上記の『シリーズの意図と全体マップ』について、学術的な視点から解説を加えます。より踏み込んだ専門的な内容については、記事内のリンクから詳細記事をご覧いただけます。この記事の要約【...

人間の欲求や好奇心は、人類が繁栄するために不可欠なものでした。しかし、現代の個人レベルでは、それが幸福を犠牲にしていないか、意思決定の都度、自問することが重要です。

たとえ不安が除去できなくても、誤った意思決定を是正し「行動」を「習慣化」さえしてしまえば、状況は相当に軽減されるはずです。

行動先行による習慣化についての解説記事はこちらをクリック

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手段③:神経伝達物質やホルモンの量の調整

神経伝達物質には、興奮性のもの(ドーパミン、ノルアドレナリンなど)と、抑制性のもの(GABAグリシンなど)、両方の作用を持つもの(セロトニンなど)があります。

  • 興奮系が過剰な場合(イライラ、不安、中毒)⇒抑制性の物質を総動員して総合的に抑制します。
  • 興奮系が不足の場合(無気力、うつ症状)⇒該当する物質の脳内量を増やすのが対応の基本です。

特に、幸福に直接関係する「3大幸せホルモン(※)」と呼ばれる、セロトニン、ドーパミン、オキシトシン(+エンドルフィン)に焦点を合わせることが重要です。(※これらは厳密には神経伝達物質ですが、通称としてホルモンと呼ばれることが多いです)

→【補足記事2】幸福に関連する神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン等)の役割と分泌を促す行動

ドーパミンがもたらす「達成感」や「快感」は、それを目一杯感じ取った上で、依存や中毒などの暴走を起こさないようにセロトニンで安定化できれば理想です。 その意味で、精神的な安定を保ち、幸福を感じやすくする基礎はセロトニンにあると言っても良いでしょう。セロトニンが十分に作用すれば、ドーパミンによる意欲は「人生の成功」に繋がり、暴走を防ぐことができます。

→【補足記事3】社会的つながりとオキシトシン―「孤独」が幸福度に与える影響についての研究

※ここに記された内容は、脳の機能に関する一般的な知見に基づくものです。心身に深刻な不調を感じている場合や、すでに通院中の方は、自己判断でサプリメントの摂取や生活習慣の急激な変更を行わず、必ず主治医にご相談ください。

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この記事に関するよくある質問

Q.幸福度が高い人の脳にある、特定の部位(吻側前部帯状回)の秘密とは?
A.日本の生理学研究所の研究により、幸福感が高い人はこの部位の体積が物理的に大きいことが判明しました。幸福とは一時的な感情ではなく、筋肉と同じく脳内に『蓄積』し、物理的に育てることができる実体なのです。
Q.『幸福脳』を育てるための4つの実践ステップ(ストレス除去〜幸福の蓄積)。
A.1.勝算のない環境からの撤退(コルチゾール低減)、2.地位財への執着制御(ドーパミン最適化)、3.ホルモンバランスの調整、4.感謝や利他行動による蓄積。このフローがシナプス可塑性を促し、幸福の回路を太くします。
Q.感謝や利他行動が、なぜ脳の物理的な体積を増やす『脳の筋トレ』になるのですか?
A.感謝は報酬系と安らぎの系を同時に活性化させ、吻側前部帯状回を含む幸福回路のシナプス結合を長期増強(LTP)させるからです。精神論ではない、脳の地図を書き換えるための具体的なウェルビーイング・トレーニングです。
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