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価値理論/円環モデル

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領域: 心理学・行動経済学・社会学カテゴリー: 理論・概念同義語: 普遍的価値体系理論, シュワルツの円環モデル

要約

人間の基本的価値観を10〜19のカテゴリーに分類し、それぞれの価値が持つ「補完関係」と「対立関係」を円環上の幾何学的構造で示した理論である。

詳細解説

学術的・科学的定義

価値理論/円環モデルとは、シャローム・H・シュワルツが提唱した、人間の基本的価値観を相互関係のある体系として整理する理論である。価値観を、自己方向、刺激、快楽、達成、権力、安全、同調、伝統、慈愛、普遍主義などのカテゴリーに分け、それらを円環上に配置する。隣接する価値は同時に追求しやすく、対角にある価値は心理的葛藤を生みやすいとされる。

主要な機能・メカニズム

この理論の強みは、価値観を単なる好みの一覧ではなく、補完関係と対立関係を持つ構造として見える化する点にある。たとえば、安全や伝統を重視すると、刺激や自己方向との緊張が生じやすい。達成や権力を重視すると、慈愛や普遍主義と衝突する場面がある。人はすべての価値を同時に最大化できないため、実際の意思決定では価値の優先順位が問われる。円環モデルは、このトレードオフを構造的に理解する道具である。

混同しやすい概念との違い

価値理論は、性格診断や道徳診断とは異なる。性格は行動傾向を示すのに対し、価値は何を望ましいと考えるかを示す。道徳基盤理論が善悪判断の直感的基盤を扱うのに対し、シュワルツの円環モデルは人生選択、社会的態度、宗教性、政治意識などに関わる広い価値構造を扱う。価値観を一つの正解としてではなく、葛藤を含む配置図として捉える点が重要である。

科学化幸福論との関連性

本サイトにおける位置づけ

本サイトでは、価値理論/円環モデルを、信仰、宗教、哲学、美意識、人生設計をつなぐ価値観コンパスの基礎理論として位置づけている。宗教や世界観は、単に信じる内容だけでなく、どの価値を優先し、どの価値を抑制するかに影響する。円環モデルは、読者が自分の価値観の矛盾や偏りを、感情論ではなく構造として理解するための地図になる。

幸福論における意味

幸福は、自分の価値観と生活の配置が大きく矛盾すると損なわれやすい。自由を重視する人が過度に統制された環境に置かれたり、慈愛を重視する人が競争一辺倒の環境で働いたりすると、条件が良くても内面的な不一致が生じる。円環モデルは、なぜ自分が特定の環境で苦しくなるのか、どの価値を犠牲にしているのかを見極める手がかりになる。

読み解く際の注意点

円環モデルを使う際には、自分の価値を一つに固定しすぎないことが重要である。人は安全も自由も、達成も慈愛も求めるが、人生の時期や状況によって優先順位が変わる。価値の葛藤は欠陥ではなく、複数の大切なものを持つ人間に自然に生じる構造である。本サイトでは、葛藤を消すのではなく、どの価値を今の人生で主軸にするかを意識的に選ぶための道具として扱う。


References: Schwartz, S. H. (2012) "An Overview of the Schwartz Theory of Basic Values", Roccas, S. (2005) "The effect of religion on personal values"
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