要約
経済成長や所得の増加が、ある一定水準を超えると必ずしも幸福度の向上に繋がらなくなる現象である。
詳細解説
学術的・科学的定義
経済学者のリチャード・イースタリンが1974年に提唱した概念である。一国内の個人間比較では高所得者ほど幸福度が高い傾向にあるが、国全体が豊かになり一人当たり所得が上昇しても、社会全体の平均的な幸福度はそれ以上上昇しないという逆説的な現象を指す。
重要な構成要素・メカニズム
このパラドックスの背景には、周囲と比較して自分の立ち位置を判断する「社会的比較」と、上昇した生活水準にすぐに慣れてしまう「順応(適応)」のメカニズムがある。所得の絶対量ではなく、相対的な地位や期待水準の変動が幸福感に強く影響するため、全体の底上げが個人の主観的満足に直結しないのである。
科学化幸福論との関連性
本記事における文脈
地位財である所得には幸福寄与の限界点(閾値)があることを示す、論理の主軸として機能している。現代日本においては年収1,200万円程度がその飽和点であると推計する根拠として用いられている。
幸福への影響と実践的活用法
所得を青天井に追い求めることは、期待水準の上方シフトによる不幸を招きかねない。一定の基準に達した後は、追加の収入を得る努力よりも、比較にさらされない非地位財(自由や健康)にリソースを再配分することが、持続的な幸福を得るための賢明な意思決定となる。
References: Easterlin, R. A. (1974) "Does economic growth improve the human lot?"

