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表出抑制

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領域: 心理学・行動経済学・社会学カテゴリー: 専門用語同義語: 感情抑制, ポーカーフェイス, 我慢

要約

内面的に生じている感情を、表情や声、身振りなどに出さないよう意識的に抑え込む反応焦点型の感情制御戦略である。

詳細解説

学術的・科学的定義

表出抑制(Expressive Suppression)とは、感情調節プロセスにおける「反応変容」の一種である。不快な感情が湧いている際、それを隠して中立的な表情を維持することを指す。研究によれば、表出抑制はポジティブ感情体験を減衰させる一方、ネガティブ感情の主観的な強度をほとんど軽減させない。また、抑制を行っている本人の心拍数や血圧を有意に上昇させるだけでなく、交流している相手のストレスレベルも上昇させるという「対人的な害」が確認されている。

重要な構成要素・メカニズム

メカニズムは、前頭葉による運動出力の強制的な停止に基づいている。これは脳に過度な認知的負荷をかけ、周囲の状況を把握する余裕を奪う。貯水槽モデルにおいては、汚れた水が流れ込んだ後に、その排出を無理に止めようとして「内圧」を高めてしまっている状態に相当する。長期的な表出抑制の習慣は、自己との断絶感を深め、抑うつや自尊心の低下を招く「感情の不一致」の状態を定着させてしまう。

科学化幸福論との関連性

本記事における文脈

反応焦点型戦略」の代表的な失敗例として紹介されている。我慢を「美徳」とする日本文化のバイアスを解き、それが実はいかに幸福度を破壊する高コストな行為であるかを説明する文脈で用いられている。

幸福への影響と実践活用法

表出抑制を「手放す」ことは、心の基礎体温を安定させる。実践的には、日常生活で「不自然なポーカーフェイス」を自分に強いないことである。不快な感情を感じた際、それを他者にぶつける(爆発)のではなく、まず自身の内面で「認知的再評価(意味の書き換え)」を行い、抑制の必要性そのものを減らす努力をする。もし抑えきれない場合は、信頼できる相手に「今は少し混乱している」と自己開示することで、オキシトシンの分泌を促し、抑制によるストレスを中和させることが有効である。


References: Gross, J. J., & Levenson, R. W. (1993) "Emotional suppression: Physiology, self-report, and expressive behavior", Srivastava, S., et al. (2009) "The social costs of emotional suppression"
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