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構成主義的感情理論

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領域: 心理学・行動経済学・社会学カテゴリー: 理論・概念同義語: 感情構成主義, 脳の予測モデル

要約

感情は脳に備わった固定的な回路ではなく、身体信号(コア・アフェクト)を外部の状況と過去の経験に基づいて脳がその都度「構成」するものであるという理論である。

詳細解説

学術的・科学的定義

構成主義的感情理論(Theory of Constructed Emotion)とは、リサ・フェルドマン・バレットが提唱した、従来の「基本感情説(ポール・エクマン等)」を覆す革命的理論である。脳は(1)身体からの内受容感覚(コア・アフェクト)、(2)外部環境の文脈、(3)過去の学習概念、の3つを統合し、「この身体反応は、この状況では『怒り』と解釈するのが妥当だ」と予測・分類することで、初めて感情体験が生まれると説く。

重要な構成要素・メカニズム

このプロセスは脳の「予測的符号化(プレディクティブ・コーディング)」によって瞬時に行われる。つまり、私たちは感情を受動的に「感じる」のではなく、脳が能動的に「作っている」のである。この理論は、感情の普遍性を否定し、文化や言語、個人の学習によって感情のあり方が多様に変化することを示唆している。感情は脳による推論の「結果」であり、固定的な真実ではない。

科学化幸福論との関連性

本記事における文脈

感情のメカニズムを脳科学的に説明する最新理論として紹介されている。幸福が「建築可能」である理由を、脳が感情を構成するプロセスに介入できる(概念を学び直せる)点に見出している。

幸福への影響と実践活用法

感情が構成物であることを理解すると、不快な反応を別の感情として「再定義」する余地が生まれる。活用法としては、自身の「感情の粒度(ボキャブラリー)」を高めることである。漠然とした不快感を精密に名付けたり、過去の経験を新しい視点で解釈し直したりすることで、脳が構成する感情そのものをポジティブな方向へ誘導できるようになる。これは心のOSを書き換えるための、最も知的な航海術となる。


References: Barrett, L. F. (2017) "How Emotions Are Made: The Secret Life of the Brain"
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