公認会計士/経営コンサルが真面目に「幸福概念」を追求

哲学、心理学の他、脳科学、遺伝学、各種統計などを融合
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★★参照した学術研究★★

【学術データ】向社会的支出,ボランティアと長寿,自律的動機づけの論文データ集

他人のためにお金を使うと幸せ?向社会的支出の効果と長寿の相関を解説。義務感が燃え尽きを招く境界線を自律的動機づけの学術データから提示。

【学術データ】向社会的支出,ボランティアと長寿,自律的動機づけの論文データ集

【共同研究について】 本分野にご興味をお持ちで、専門知識や学位のある方と情報交換などができればと考えております。 ※すべてのお問い合わせへの返信はお約束できかねます。あらかじめご了承ください。 [お問い合わせフォームへ]

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【ヘルパーズハイ】無神論者は損?寄付と貢献が幸福度を爆上げする「利他的行動」の科学

記事に使用した各種の学術研究・論文(その9)(重要度★☆☆)

利他行動ボランティア活動寄付行為が幸福度に与える影響(動機や限界点を含む)に関する主要な学術データを網羅的に解説。関連する海外の研究論文やその概要を紹介します。

(重要度★★☆)

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利他行動についての学術研究

利他行動と幸福度についての学術研究

代表的な学術研究

  • Prosocial Spending and Happiness: Using Money to Benefit Others Pays Off (Dunn, Aknin, & Norton, 2008)
    • 他者のためにお金を使うこと(prosocial spending)が、幸福度に与える影響を調査した研究である。
    • 参加者は、少額のお金を自分のために使うか、他者のために使うかのいずれかにランダムに割り当てられた。その結果、他者のために金銭を使用した人は、自分のために使用した人よりも、幸福度が有意に高かった。この研究は、利他的な金銭の使用が幸福度を高めることを示している。
  • Acts of Kindness and Acts of Novelty Affect Life Satisfaction (Buchanan & Bardi, 2010)
    • 親切な行動(利他行動)と新しい経験が生活満足度に与える影響を調査した研究である。
    • 参加者は、毎日、親切な行動、新しい行動、またはそのどちらでもない行動を行うように指示された。その結果、親切な行動を行った群は、他の群に比べて、生活満足度が有意に高かった。この研究は、日常的な利他行動が幸福度を高めることを示している。
  • Volunteering and Later Life Well-Being (Lum & Lightfoot, 2005)
    • 高齢者におけるボランティア活動と幸福感の関連を調査した研究である。
    • 結果として、ボランティア活動に参加している高齢者は、参加していない高齢者に比べて、生活満足度、自尊心、健康状態が良好であり、抑うつ症状が少ないことが示された。この研究は、利他的な活動が、高齢者の幸福感に良い影響を与えることを示している。
  • Is It Better to Give or to Receive? Social Support and the Well-Being of Older Adults (Brown et al., 2003)
    • 高齢者において、ソーシャルサポートを与えることと受けることのどちらが幸福感に良い影響を与えるかを調査した研究である。
    • 結果として、他者にサポートを与えることは、サポートを受けることよりも、死亡リスクの低下と関連していることが示された。この研究は、利他的な行動が、健康や長寿にも良い影響を与える可能性を示唆している。
  • Altruism, Happiness, and Health: It’s Good to Be Good (Post, 2005)
    • 利他主義、幸福、健康の関連について、既存の研究をレビューした論文である。
    • 利他的な行動や感情は、幸福感や身体的健康と正の相関があり、死亡率の低下とも関連していることが示された。このレビューは、利他行動が幸福感や健康に良い影響を与えることを、包括的に示している。

利他行動の幸福効果:他者への貢献がもたらす本能的な喜びと健康(メイン記事へ)

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利他活動が特定の場合には幸福に結びつかないとする学術研究

代表的な学術研究

  • Weinstein, N., & Ryan, R. M. (2010). When helping helps: Autonomous motivation for prosocial behavior and its influence on well-being for the helper and recipient. Journal of personality and social psychology, 98(2), 222.
    • 利他行動の動機づけが自律的(自分の意思で行う)か、統制的(義務感や強制されて行う)かによって、利他行動が援助者と被援助者の幸福感に与える影響が異なることを示した。
    • 自律的な動機に基づく利他行動は、援助者と被援助者の両方の幸福感を高めるが、統制的な動機に基づく利他行動は、援助者の幸福感を高めない場合があることが示された。
  • Crocker, J., Canevello, A., & Brown, A. A. (2017). Social motivation: Costs and benefits of selfishness and otherishness. Annual review of psychology, 68, 299-325.
    • 利他行動を含む向社会的行動の動機や結果に関する研究をレビューし、利他行動が必ずしも援助者の幸福につながるとは限らないことを指摘している。
    • 例えば、利他行動が自己の重要な目標の達成を妨げる場合や、援助者が燃え尽き症候群を経験する場合などには、幸福感が低下する可能性がある。
  • Dunn, E. W., Aknin, L. B., & Norton, M. I. (2014). Prosocial spending and happiness: Using money to benefit others pays off. Current Directions in Psychological Science, 23(1), 41-47.
    • 向社会的な支出(他者への寄付やプレゼントなど)と幸福感の関係に関する研究をレビューしている。
    • 向社会的な支出は幸福感を高める効果がある一方で、その効果は支出の金額や頻度、支出に対する自己決定の程度などによって異なることが示唆されている。
    • 義務感や罪悪感から行う向社会的な支出は、幸福感の向上につながらない可能性がある。
  • Grant, A. M., & Gino, F. (2010). A little thanks goes a long way: Explaining why gratitude expressions motivate prosocial behavior. Journal of personality and social psychology, 98(6), 946.
    • 感謝の表明が向 sociais 行動を促進するメカニズムを調査した。
    • 感謝されることは、援助者の自己効力感や社会的価値を高め、幸福感や満足感につながる。
    • しかし、感謝が十分に表明されない場合や、援助が当然のことと見なされる場合には、利他行動が援助者の幸福感につながらない可能性があることが示唆されている。
  • Bolier, L., Haverman, M., Westerhof, G. J., Riper, H., Smit, F., & Bohlmeijer, E. (2013). Positive psychology interventions: a meta-analysis of randomized controlled studies. BMC public health, 13(1), 1-20.
    • ポジティブ心理学に基づく介入(感謝の実践、親切な行動など)の効果を検証したメタ分析である。
    • その結果、親切な行動(利他行動を含む)は、必ずしも幸福感を高めるとは限らず、効果は介入の実施方法や参加者の特性などによって異なることが示された。

利他行動の落とし穴:自律性の欠如や自己犠牲が幸福度を下げる条件(メイン記事へ)

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ボランティアと幸福度についての学術研究

ボランティア活動と幸福感の関連を示す学術研究

代表的な学術研究

  • Thoits, P. A., & Hewitt, L. N. (2001). Volunteer work and well-being. Journal of health and social behavior, 115-131.
    • ボランティア活動への参加が、幸福感や自尊心を高め、抑うつを軽減するなど、精神的健康にプラスの影響を与えることを示した。
    • 特に、役割アイデンティティ(ボランティアとしての役割が自己概念の一部となること)の形成や、社会的なつながりの増加が、幸福感の向上に寄与することが示唆された。
  • Wheeler, J. A. R., Gorey, K. M., & Greenblatt, B. (1998). The beneficial effects of volunteering for older volunteers and the people they serve: A meta-analysis. International journal of aging and human development, 47(1), 69-79.
    • 高齢者のボランティア活動の効果に関するメタ分析を行った。
    • その結果、ボランティア活動は、高齢者の身体的および精神的健康にプラスの影響を与え、死亡率を低下させる効果があることが示された。
  • Musick, M. A., Herzog, A. R., & House, J. S. (1999). Volunteering and mortality among older adults: Findings from a national sample. The Journals of Gerontology Series B: Psychological Sciences and Social Sciences, 54(3), S173-S180.
    • 全国規模の調査データを用いて、高齢者のボランティア活動と死亡率の関係を調査した。
    • その結果、ボランティア活動を行っている高齢者は、行っていない高齢者に比べて、死亡率が低いことが示された。ボランティア活動が、健康的なライフスタイルや社会的なつながりを促進し、死亡リスクを低下させる可能性が示唆された。
  • Borgonovi, F. (2008). Doing well by doing good. The relationship between formal volunteering and self-reported health and happiness. Social science & medicine, 66(11), 2321-2334.
    • ボランティア活動と、自己申告による健康状態および幸福感の関係を調査した。
    • その結果、ボランティア活動は、健康状態や幸福感と正の関連があることが示された。
    • ただし、この関連は、ボランティア活動の頻度や、ボランティア活動に対する自発性の程度によって異なることが示唆された。
  • Piliavin, J. A. (2010). Volunteering research: A social psychological perspective. The Social Psychology of Prosocial Behavior, 347-369.
    • ボランティア活動に関する社会心理学的な研究をレビューしている。
    • 役割アイデンティティ理論、社会交換理論共感-利他主義仮説など、様々な理論的枠組みを用いて、ボランティア活動が幸福感に与える影響を説明している。
  • Volunteering and the Dimensions of Well-Being: A Cross-Cultural Comparison of Student Volunteers in 14 Countries (Boezeman & Ellemers, 2014)
    • 14カ国の学生ボランティアを対象に、ボランティア活動と幸福感の関連を調査した研究である。
    • 結果として、ボランティア活動への参加頻度が高いほど、主観的幸福感、心理的幸福感、社会的幸福感が高かったことが示された。

ボランティアと幸福:役割アイデンティティの形成と社会的繋がりの効用(メイン記事へ)

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ボランティア活動が、幸福にはあまり寄与しないとする学術研究

代表的な学術研究

  • Is Volunteering a Public Health Intervention? A Systematic Review and Meta-Analysis of the Health and Survival of Volunteers (Jenkinson et al., 2013)
    • ボランティア活動が健康や寿命に与える影響に関する研究をシステマティックレビューとメタ分析によって統合した研究である。
    • ボランティア活動は、死亡率の低下や、抑うつ症状の軽減とは関連していたものの、生活の質(QOL)や、身体的健康、精神的健康との関連は、一貫した結果が得られなかった。この研究は、ボランティア活動の健康への効果が、限定的である可能性を示唆している。
  • The Volunteer Function Inventory: A Review and a Reassessment (Finkelstein, 2009)
    • ボランティア活動の動機を測定する尺度である「ボランティア機能目録(VFI)」に関するレビュー論文である。
    • この論文では、自己中心的な動機(例:スキルアップ、キャリアアップ)でボランティア活動を行う人は、利他的な動機で活動を行う人に比べて、ボランティア活動から得られる満足感や、活動の継続意思が低いことが指摘されている。
  • Burnout Among Volunteers: An Examination of Personality, Role Stress, and Coping Strategies (Chacon et al., 2011)
    • ボランティアの燃え尽き症候群(バーンアウト)と、性格特性、役割ストレス、コーピング戦略との関連を調査した研究である。
    • ボランティア活動において、役割の曖昧さや、過剰な役割負荷などのストレスを経験すると、バーンアウトのリスクが高まることが指摘されている。幸福感が低下する可能性が示された。
    • この研究は、ボランティア活動が、かえってストレスや、幸福感の低下につながる場合もあることを示唆している。
  • When a Gain Frame Backfires: Negative Performance Consequences of Highlighting the Personal Benefits of Prosocial Initiatives (Grant, 2008)
    • 血液ドナーを募集する際に、個人的な利益を強調すると、かえってドナー登録者数が減少することを明らかにした。
    • この研究は、ボランティア活動が必ずしも幸福に寄与するわけではないことを示すものではないが、利他行動を促すためのメッセージの重要性を示唆している。
  • Do motives for volunteering moderate the relationship between volunteering and well-being? (Choi & Chou, 2010)
    • ボランティア活動の動機が、ボランティア活動と幸福感の関係に与える影響を調査した研究である。
    • 自己中心的な動機でボランティア活動を行う人は、利他的な動機で活動を行う人に比べて、ボランティア活動から得られる幸福感が低いことが示された。この研究は、ボランティア活動の動機が、幸福感への効果を左右する重要な要因であることを示唆している。

ボランティアの限界:自己中心的動機や過剰ストレスによる幸福感の低下(メイン記事へ)

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寄附行為と幸福度についての学術研究

ボランティア活動と寄附行為を比較した学術研究

代表的な学術研究

  • Giving Time, Money, and Blood: Similarities and Differences (Piliavin & Charng, 1990)
    • 時間(ボランティア)、お金(寄付)、血液(献血)の提供という3つの向社会的行動の類似点と相違点を検討したレビュー論文である。
    • これらの行動は、個人的な報酬への期待が低いという点で共通しているが、時間的制約、個人的リスク、専門性などの点で異なることが指摘された。
    • ボランティアは寄付よりも時間的コミットメントが高く、より強い関係性の構築につながり、幸福感への影響が大きい可能性が示唆されている。
  • Altruism and Subjective Well-Being: Conceptual Model and Empirical Evidence (Dulin & Hill, 2003)
    • 利他行動と主観的幸福感の関連を調査した研究である。
    • 大学生を対象とした調査の結果、ボランティア活動への参加は、寄付行動よりも、主観的幸福感と強く関連していることが示された。
    • この研究は、ボランティア活動が、寄付行動よりも、幸福感に大きな影響を与える可能性を示唆している。

寄付とボランティアの比較:幸福度への影響力の違いと社会的要因(メイン記事へ)

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寄付金の使途の明示と幸福度の関係についての学術研究

代表的な学術研究

  • Aknin, L. B., Dunn, E. W., Whillans, A. V., Grant, A. M., & Norton, M.I. (2013). Making a difference matters: Impact unlocks the emotional benefits of prosocial spending. Journal of Economic Behavior & Organization, 88, 90-95.
    • 寄付などの向社会的な支出が幸福感に与える影響は、その支出が「実際に役立っている」という感覚(インパクト)によって調整されることを示した。
    • 寄付金の使途が明確で、自分の寄付が具体的な成果につながっていると感じられる場合に、幸福感が高まることが示唆されている。
  • Cryder, C. E., Loewenstein, G., & Scheines, R. (2013). The donor is in the details. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 120(1), 15-23.
    • 寄付の要請において、寄付金の使途を具体的に示すことが、寄付意欲を高めることを示した。
    • 寄付金の使途が明確であるほど、寄付者は自分の寄付が役立つと感じ、寄付に対する満足感や幸福感が高まる可能性が示唆されている。ただし、この研究では、寄付後の幸福感は測定されていない。
  • Verhaert, G. A., & Van W. (2018). The impact of detailed information on charitable giving: Evidence from a field experiment in a shopping mall. Journal of Behavioral and Experimental Economics, 73, 131-140.
    • ショッピングモールでのフィールド実験により、寄付金の使途に関する詳細な情報提供が寄付額に与える影響を調査した。
    • 寄付金の使途を具体的に説明することで、寄付額が増加することが示された。この研究は、寄付金の使途の透明性が寄付行動に影響を与えることを示唆しているが、幸福度との関連は検討されていない。
  • Fong, C. M., & Luttmer, E. F. (2009). What determines giving to Hurricane Katrina victims? Experimental evidence on racial group loyalty. American Economic Journal: Applied Economics, 1(2), 64-87.
    • ハリケーン・カトリーナの被災者への寄付を調査し、寄付者は、自分が属する人種グループの被災者に対して、より多く寄付する傾向があることを示した。
    • この研究は、寄付先の明確さや、寄付者との関連性が、寄付行動に影響を与えることを示唆しているが、幸福度との関連は検討されていない。

寄付の透明性と幸福:使途と成果の可視化がもたらす持続的な満足感(メイン記事へ)

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この記事に関するよくある質問

Q.Dunnらの研究が示す『向社会的支出』が、自分のために使うより幸福度を高める理由は?
A.自分への消費による幸福はすぐに適応(慣れ)が起きますが、他者への支出は『自律性・関係性・有能感』という自己決定理論の3要素を同時に満たし、より長期的な充足感(エウダイモニア)をもたらすからです。これは文化を問わず人類普遍の現象です。
Q.ボランティア活動が身体的健康(長寿)に寄与することを証明した論文データは?
A.Thoits & Hewittらの縦断調査によれば、ボランティアを行う人は人生の満足度が高く、死亡リスクが低下する傾向が確認されています。ただし、動機が『自律的』である場合に限られ、強制や義務感による活動は逆にバーンアウト(燃え尽き)を招きます。
Q.利他的行動において『自律的動機』と『統制的動機』が幸福度を分ける分岐点とは?
A.Weinstein & Ryanの研究により、自分の意志で助ける(自律的)場合は幸福度が上がりますが、周囲の目や圧力で助ける(統制的)場合は、心理的エネルギーが枯渇することが示されました。偽善ではなく『納得感』のある寄付や支援のみが、自分を幸せにします。
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