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反応焦点型戦略

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領域: 心理学・行動経済学・社会学カテゴリー: 専門用語同義語: 発生後制御戦略, 対症療法的感情制御

要約

感情が完全に生じ、生理的覚醒や行動傾向(表情、衝動等)が動き出した「後」の段階で、その表出や体験を抑え込もうとする制御戦略のことである。

詳細解説

学術的・科学的定義

反応焦点型戦略とは、ジェームズ・グロス感情制御モデルの最終段階である「反応変容(表出抑制)」を指す。これは「既に起きた火災を消火しようとする消火活動」に例えられる。生じてしまった怒りや悲しみを、周囲に悟られないよう表情を殺したり、感情を押し殺したりする行為である。心理学的研究では、この戦略は内面的な不快感を減らす効果が低いばかりか、むしろ交感神経を活性化させ、心身に大きなストレス(代償)を強いることが判明している。

重要な構成要素・メカニズム

核心となるメカニズムは「認知的リソースの枯渇」である。生じている感情を抑え込むには膨大なエネルギーが必要となり、その結果、集中力が削がれ、記憶力が低下し、他者とのコミュニケーションが冷淡(ぎこちない)になるという負の側面を持つ。また、抑圧された感情はDMNの燃料となり、後に激しい「反芻思考」や爆発的な感情噴出を招くリスクを高める。貯水槽モデルにおいては、水質が悪化した後の不適切な処置にあたる。

科学化幸福論との関連性

本記事における文脈

表出抑制(我慢)」という名で紹介され、感情制御において「避けるべき(あるいは最小限にすべき)戦略」として警告されている。我慢がもたらす心身への悪影響を説き、より健全な「先行要因焦点型戦略」への転換を促す対比軸として用いられている。

幸福への影響と実践活用法

この戦略の限界を知ることは、「無理なポジティブ主義」から自身を解放することに繋がる。活用法としては、自身の「我慢(反応焦点型)」の癖をメタ認知し、我慢が必要になる前の段階(L軸の認知修正等)での介入を自分に課すことである。もし感情が生じてしまったら、無理に抑え込む(我慢する)のではなく、「あぁ、今は自分は怒っているのだな」とあるがままに受容(自己受容)し、安全な場所でジャーナリング等で吐き出すことで、反応焦点型の代償を最小限に留めるべきである。


References: Gross, J. J. (2002) "Emotion regulation: Affective, cognitive, and social consequences", Butler, E. A., et al. (2003) "The social consequences of expressive suppression"
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