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損失回避バイアス/損失回避性

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領域: 心理学・行動経済学・社会学カテゴリー: 専門用語同義語: 損失回避の非対称性, 損切りの困難さ

要約

同等の価値であっても、何かを得る喜び(利益)よりも、失う痛み(損失)を心理的に2倍以上強く感じ、不合理にリスクを回避しようとする脳の性質である。

詳細解説

学術的・科学的定義と脳科学的メカニズム

プロスペクト理論の核心概念である。脳機能計測の結果、損失に直面した際の扁桃体および島皮質の活動レベルは、同額の利得を得た際の報酬系(線条体)の活動レベルを遥かに上回ることが判明している。人間は期待値がプラスであっても、微小な損失リスクを避けるために「合理的な勝負」を降りてしまう非対称な心理構造を持つ。貯水槽モデルにおいては、将来的な「良水(希望)」を引き入れる変革よりも、現在の「溜まり水(現状)」を失うことを極度に恐れ、結果として水質の腐敗(人生の停滞)を招く一因となる。

科学化幸福論との関連性

本記事における文脈

社会制度の刷新(UBI等)において、便益よりも失敗のリスクを過大評価してしまう「変革への抵抗」や、投資・起業における個人の心理的ブレーキとして紹介されている。失敗への恐怖が、幸福の貯水槽を「防衛的な城」に変えてしまうリスクである。

幸福への影響と実践的活用法

損失を「失うこと」ではなく「現状を改善するための投資コスト」としてリフレーミングすることが有効である。脳のバグが失敗を2倍大きく見積もっていることをメタ認知し、10年後の「理想の火曜日」の視点から「何もしないことによる長期的損失」を冷静に算出することである。不合理な損失の痛みに対しては、意識的なパイロット(システム2)による情報の書き換えを行い、納得感を持ってリスクを取りに行く姿勢が、貯水槽の水を循環させ、新鮮なウェルビーイングをもたらす。


References: Kahneman, D., & Tversky, A. (1979) "Prospect Theory"
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