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個人の生き方(失業、美容整形、自己概念と社会的価値)についての網羅的な詳細解説(メイン記事へ)
記事に使用した各種の学術研究・論文(その13)(重要度★☆☆)
失業の傷跡効果、雇用不安、美容整形の動機と満足度に関する学術研究を解説。BDDや人格特性、幸福度に与える長期的な影響のデータを提供します。
失業と幸福度に関する学術研究
失業と幸福度の低下に関する学術研究
失業が大きな悪影響をもたらすとした学術研究
代表的な学術研究の学術解説
- Paul, K. I., & Moser, K. (2009). Unemployment impairs mental health: Meta-analyses. Journal of Vocational Behavior, 74(3), 264-282.
- Lucas, R. E., Clark, A. E., Georgellis, Y., & Diener, E. (2004). Unemployment alters the set point for life satisfaction. Psychological Science, 15(1), 8-13.
- ドイツの大規模パネルデータ(German Socio-Economic Panel)を用いて、失業と生活満足度の関係を縦断的に検討した。
- その結果、失業は生活満足度を大きく低下させ、その影響は失業後も長期間持続することが明らかになった。
- 具体的には、失業前の生活満足度を基準とした場合、失業によって生活満足度は大きく低下し、失業後数年が経過しても、失業前の水準まで完全には回復しないことが示された。さらに、再就職によって生活満足度はある程度回復するものの、失業前の水準には戻らないことも明らかになった。
- この結果から、失業は単なる一時的な不幸ではなく、個人の幸福の「基準値」そのものを変化させてしまうほど、深刻な影響を持つ可能性が示唆された。
- McKee-Ryan, F., Song, Z., Wanberg, C. R., & Kinicki, A. J. (2005). Psychological and physical well-being during unemployment: a meta-analytic study. Journal of Applied Psychology, 90(1), 53-76.
- 失業と幸福感に関する多数の研究をメタ分析の手法を用いて統合的に検討した。
- その結果、失業は幸福感を低下させることが確認された。
- さらに、失業が幸福感に及ぼす影響の大きさは、失業期間の長さ、経済的困窮の程度、ソーシャルサポートの有無、再就職への期待の程度などによって異なることが明らかになった。
- 具体的には、失業期間が長いほど、経済的困窮が深刻であるほど、ソーシャルサポートが少ないほど、再就職への期待が低いほど、失業による幸福感の低下は大きかった。
- この結果から、失業による幸福感の低下を緩和するためには、経済的支援、社会的支援、再就職支援などの多面的なサポートが重要であることが示唆された。
失業がもたらす「非金銭的コスト」:自尊心の低下とメンタルヘルス悪化の深刻な実態(メイン記事へ)
傷跡効果(失業による長期に亘る悪影響)についての研究の学術解説
- Strandh, M., Hammarström, A., Nilsson, K., Nordenmark, M., & Russel, H. (2014). Unemployment, gender and mental health: The role of the gender regime. Sociology of Health & Illness, 36(7), 975–991.
- スウェーデンの大規模な追跡調査(Northern Swedish Cohort)のデータを用いて、若年期(16歳から21歳)の失業経験が、中年期(42歳)の賃金と健康(身体的健康と精神的健康)に及ぼす影響を、性別との関連から検討した。
- その結果、若年期に失業を経験した人は、中年期において、男女ともに賃金が低く、健康状態も悪いことが明らかになった。
- さらに、性別役割分業が強い地域(伝統的なジェンダー規範が強い)では、男性は精神的健康が、女性は身体的健康が特に悪化する傾向が見られた。
- これらの結果は、過去の失業経験が、たとえ現在は就業していたとしても、長期にわたって個人の経済状況や健康に悪影響を及ぼし、「傷跡」として残ることを示唆している。
- Clark, A. E., Georgellis, Y., & Sanfey, P. (2001). Scarring: The psychological impact of past unemployment. Economica, 68(270), 221-241.
- 英国のパネルデータ(British Household Panel Survey)を用いて、過去の失業経験が現在の生活満足度に及ぼす影響を、現在の就業状況を統制した上で検討した。
- その結果、過去に失業を経験した人は、現在は就業している場合でも、一度も失業を経験したことがない人と比較して、生活満足度が低いことが明らかになった。
- さらに、過去の失業経験の回数が多いほど、また、過去の失業期間が長いほど、現在の生活満足度が低いことも示された。
- これらの結果は、失業経験が、たとえ現在は就業していたとしても、生活満足度に対して長期的なネガティブな影響、「傷跡効果(scarring effect)」を持つことを示している。
- Goldsmith, A. H., Veum, J. R., & Darity Jr, W. (1996). The impact of psychological and human capital on wages. Economic Inquiry, 34(4), 815-829.
- アメリカの全国青年縦断調査(National Longitudinal Survey of Youth)のデータを用いて、失業の繰り返し経験(失業の再発)が精神的健康に及ぼす影響を検討した。
- その結果、過去に失業を経験した人は、初めて失業を経験した人に比べて、失業による精神的健康への悪影響が大きいことが明らかになった。
- 具体的には、過去の失業回数が多いほど、現在の失業による抑うつ症状の悪化が大きかった。さらに、過去の失業経験は、現在の失業が精神的健康に与える影響を増幅するだけでなく、それ自体が精神的健康を悪化させる独立した要因であることも示された。
- これらの結果は、過去の失業経験が、精神的健康に対する「傷跡」として残り、将来の失業に対する脆弱性を高める可能性を示唆している。
「傷跡効果」の恐怖:過去の失業経験が将来の賃金と健康に及ぼす長期的ダメージ(メイン記事へ)
雇用不安と幸福度の低下に関する学術研究
代表的な学術研究の学術解説
- De Witte, H. (1999). Job insecurity and psychological well-being: Review of the literature and exploration of some unresolved issues. European Journal of Work and Organizational Psychology, 8(2), 155-177.
- 雇用不安と精神的健康に関する文献レビューを行い、雇用不安が精神的健康に与える影響について検討した。
- その結果、雇用の安定性が低い状況では、労働者は将来の失業に対する不安、すなわち雇用不安(job insecurity)を感じやすく、その不安が精神的健康を悪化させることが明らかになった。
- 具体的には、雇用不安が高い労働者は、低い労働者と比較して、抑うつ、不安、身体愁訴などの症状を示す割合が高かった。
- さらに、雇用保障(job security)が強い国や企業では、労働者の雇用不安が低く、精神的健康も良好であることが示された。
- この結果から、雇用の不安定性は、たとえ失業を経験していなくとも、将来への不安を通じて、労働者の精神的健康に悪影響を及ぼすことが示唆された。
- Greenhalgh, L., & Rosenblatt, Z. (1984). Job insecurity: Toward conceptual clarity. Academy of Management Review, 9(3), 438-448.
- 雇用不安の概念を整理し、その認知的・感情的結果について検討した。
- 雇用不安とは、「現在の仕事を継続できるかどうかについて、無力感を持って知覚された脅威」と定義され、認知的側面(失業の可能性の認知)と感情的側面(失業への不安)から構成されるとした。
- そして、雇用不安は、労働者のストレス反応、組織へのコミットメントの低下、離職意思の増大などを引き起こすことが示された。
- この結果から、雇用の不安定性は、失業の可能性の認知とそれに伴う不安を高め、労働者の心理的・組織的適応に悪影響を及ぼすことが示唆された。
- Chung, H., & van Oorschot, W. (2011). Institutions versus market forces: Explaining the employment insecurity of European individuals during (the beginning of) the economic crisis. European Sociological Review, 27(3), 287-302.
- 欧州28カ国のデータ(European Social Survey)を用いて、雇用不安と主観的幸福感の関係を検討した。その結果、雇用不安は主観的幸福感を低下させることが明らかになった。
- さらに、労働市場の規制が弱い国(解雇規制が緩い国)では、雇用不安が主観的幸福感に与える影響が大きいことも示された。
- この結果から、雇用の不安定性は、将来の失業への不安を通じて、労働者の主観的幸福感を低下させ、その影響は労働市場制度によって異なることが示唆された。
クビになるかもしれない」不安が招く病:雇用不安と抑うつ・身体愁訴の相関関係(メイン記事へ)
失業回数の精神的な影響についての学術研究
代表的な学術研究の学術解説
- Goldsmith, A. H., Veum, J. R., & Darity Jr, W. (1996). The impact of psychological and human capital on wages. Economic Inquiry, 34(4), 815-829.
- 先に紹介した Goldsmith らの研究では、過去の失業回数が多いほど、現在の失業による精神的健康への悪影響、特に抑うつ症状の悪化が大きいことが示されました。この結果は、失業経験の繰り返しが、失業に対する脆弱性を高める可能性を示唆しています。
- 失業に慣れて、反応が鈍くなるというよりは、繰り返しの失業によって、将来への希望を失い、精神的に追い詰められていく可能性が示唆される
- Wanberg, C. R., Griffiths, R. F., & Gavin, M. B. (1997). Time structure and unemployment: A longitudinal investigation. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 70(1), 75-95.
- 失業者を対象とした縦断研究を行い、失業期間中の時間構造(どのように時間を過ごしているか)と精神的健康の変化を検討した。
- その結果、失業期間が長引くにつれて、失業者は時間構造を失い、無為に過ごす時間が増えることが示された。また、失業期間が長い人ほど、精神的健康が悪化する傾向も見られた。
- しかし、興味深いことに、失業期間が非常に長い一部の失業者は、精神的健康の悪化が見られず、むしろ安定していることも示された。
失業には「慣れ」ない:失業回数が増えるほど精神的ダメージが深刻化する理由(メイン記事へ)
美容整形と幸福度に関する学術研究
美容整形と満足度についての学術研究
代表的な学術研究の学術解説
- Rankin, M., Borah, G. L., Perry, A. W., & Wey, P. D. (2006). Quality-of-life outcomes after cosmetic surgery. Plastic and Reconstructive Surgery, 102(6), 2139-2147.
- Honigman, R. J., Phillips, K. A., & Castle, D. J. (2004). A review of psychosocial outcomes for patients seeking cosmetic surgery. Plastic and Reconstructive Surgery, 113(4), 1229-1237.
- 美容整形手術を受けた患者の満足度と心理社会的変化に関する研究をレビューした結果、多くの患者が手術結果に満足し、自尊心や生活の質(QOL)が向上したと報告していることが明らかになった。
- 特に、身体醜形障害(BDD)の診断基準を満たさない患者では、良好な結果が得られる傾向にあった。
- しかし、BDDの患者や、非現実的な期待を抱いている患者では、満足度が低く、精神的な問題が悪化するリスクがあることも指摘されている。
- そのため、術前のスクリーニングと適切なカウンセリングの重要性が強調されている。
- Sarwer, D. B., Wadden, T. A., Pertschuk, M. J., & Whitaker, L. A. (1998). The psychology of cosmetic surgery: a review and reconceptualization. Clinical Psychology Review, 18(1), 1-22.
- 顔の美容整形手術を受けた患者の満足度と生活の質(QOL)の変化に関する研究をレビューした。
- その結果、ほとんどの研究で、患者は手術結果に満足し、術後には自尊心や身体イメージが改善し、QOLが向上したと報告されていることが明らかになった。
- また、美容整形手術は、単に外見を改善するだけでなく、患者の心理社会的な幸福感を高める効果があることが示唆されている。
- von Soest, T., Kvalem, I. L., Skolleborg, K. C., Roald, H. E., & Noffs, G. (2011). Psychosocial factors predicting the motivation to undergo cosmetic surgery. Plastic and Reconstructive Surgery, 127(1), 51-62.
- ノルウェーで実施された、1,556人の女性を対象とした調査研究である。
- 美容整形手術に関心のある女性は、そうでない女性と比較して、身体イメージへの不満が強く、自尊心が低く、社会的な外見不安が高い傾向が見られた。
- また、美容整形手術を受けた人の満足度は高く、自尊心の向上や身体イメージの改善が報告された。
- de Brito, M. J. A., Nahas, F. X., Cordás, T. A., Dini, G. M., & de Oliveira e Cruz, G. A. (2018). Psychosocial well-being, quality of life, and motivations of women seeking cosmetic surgery: a systematic literature review. Revista Brasileira de Cirurgia Plástica, 33(3), 444-450.
- 美容整形手術を受ける人々の精神的健康、生活の質、手術を受ける動機について、系統的文献レビューを行った。
- その結果、手術を受けた人々の多くが、自尊心、自己確信、および生活の質全般の改善など、心理社会的な幸福感のポジティブな変化を報告していることが明らかになった。
- しかし、一部の個人は、特に非現実的な期待を抱いている場合や、心理的な問題を抱えている場合には、期待される結果が得られない可能性もあることが示唆された。
美容整形は幸福度を上げるか?:7~9割が「満足」と答える肯定的側面の統計(メイン記事へ)
美容整形の部位別の満足度とトラブルに関する学術研究
部位別の満足度に関する学術研究の学術解説
- Aldaqal, S. M., Samargandi, O. A., Elbarbary, N. S., & Alnassar, M. A. (2021). Patient satisfaction with different cosmetic surgery procedures: a survey in Saudi Arabia. The Egyptian Journal of Hospital Medicine, 85(2), 3888-3892.
- サウジアラビアで行われたこの横断研究では、異なる美容整形手術を受けた患者の満足度を調査した。
- 脂肪吸引、豊胸、鼻形成、フェイスリフトなど、様々な部位の手術が含まれていたが、全体的な満足度は高く、ほとんどの患者(86.6%)が手術結果に満足していると報告した。
- しかし、統計的に有意な差ではないが、豊胸手術を受けた患者は他の手術を受けた患者よりも満足度が低い傾向が見られた。
- Warner, J. P., Gutowski, K. A., & Mlodinow, A. S. (2009). Understanding patient motivations and satisfaction with facial rejuvenation surgery: The Northwestern Facial Rejuvenation Outcomes Survey. Aesthetic Surgery Journal, 29(6), 483-490.
- 顔の若返り手術(フェイスリフト、眼瞼形成術など)を受けた患者を対象に、手術の動機、満足度、および術後の変化について調査した。
- その結果、患者は主に外見の改善と若返りを目的として手術を受けており、ほとんどの患者(90%以上)が手術結果に満足していると報告した。また、患者は、自尊心の向上、自信の回復、社会生活の改善など、心理社会的な利益も報告した。
- Kovacs, L., Papadopulos, N. A., Lonic, D., Wurzer, P., Neff, A., & Herschbach, P. (2022). Long-term results of aesthetic and functional rhinoplasty using the FACE-Q appraisal scales. Facial Plastic Surgery & Aesthetic Medicine, 24(1), 3-11.
- 鼻形成術を受けた患者を対象に、長期的な結果を患者報告アウトカム尺度であるFACE-Qを用いて評価した。
- その結果、患者は、鼻の外観、心理的・社会的機能において有意な改善を示し、高い満足度を報告した。
- 特に、外鼻の見た目と、顔全体における鼻の見え方について、有意な向上が見られた。また、結果は最長5年間維持された。
部位別のトラブルに関する学術研究の学術解説
- Uddin, M., & Al-Nuaimi, Y. (2019). Analysis of complaints in aesthetic surgery practice: identifying causes of patient dissatisfaction and risk management strategies. Aesthetic Surgery Journal, 39(6), 649-658.
- 美容外科手術に関する苦情の内容を分析し、患者の不満の原因を調査した。
- その結果、鼻形成術、乳房手術(豊胸、乳房縮小など)、脂肪吸引において、苦情が多く寄せられていることが明らかになった。
- 苦情の原因としては、手術結果への不満、合併症、医師とのコミュニケーション不足などが挙げられた。
- この結果から、これらの部位の手術は、技術的な難易度が高い、あるいは患者の期待と現実とのギャップが生じやすい可能性が示唆され、リスクマネジメントの重要性が強調されている。
- Stevens, W. G., Repta, R., Pacella, S. J., & Stoker, D. A. (2011). Safe and consistent outcomes in aesthetic surgery: A review of 7289 consecutive cases. Aesthetic Surgery Journal, 31(8), 954-963.
- 美容整形手術における合併症の種類と頻度についてレビューした。
- その結果、出血、感染、血腫などの合併症が、多くの手術で共通して見られることが明らかになった。また、豊胸手術における被膜拘縮、インプラントの破損、脂肪吸引における皮膚の凹凸、輪郭の非対称性など、特定の部位に特有の合併症も報告されている。
- この結果から、豊胸手術や脂肪吸引は、比較的合併症のリスクが高い可能性が示唆された。
- Alnassar, S. A., & Al-Mohsen, I. (2023). Incidence of post-cosmetic surgery infections in the United States: a systematic review and meta-analysis. Journal of Infection and Public Health, 16(8), 1183-1192.
- 米国の患者における美容整形手術後の感染症発生率を調査した。56の研究を対象としたメタ分析の結果、術後感染症の全体的な発生率は1.52%であった。
- 手術部位別に見ると、腹部形成術(5.25%)、乳房手術(2.63%)、顔面手術(1.22%)、脂肪吸引(0.70%)の順であった。
- この結果は、腹部形成術と乳房手術において、特に感染症のリスクが高いことを示唆している。
部位別リスクと満足度:鼻形成や豊胸手術でトラブルや不満が生じやすい理由(メイン記事へ)
美容整形がもたらす悪影響、あるいは効果が限定的であるとする学術研究
美容整形がもたらす悪影響についての学術研究の学術解説
- Veale, D., De Haro, L., & Lambrou, C. (2003). Cosmetic rhinoplasty in body dysmorphic disorder. The British Journal of Plastic Surgery, 56(6), 546-551.
- 身体醜形障害(BDD)患者における美容整形手術(特に鼻形成術)の結果を調査した。
- その結果、BDD患者は、手術後に外見が改善したと感じる割合が低く、満足度も低かった。さらに、BDDの症状が悪化したり、新たな部位への懸念が生じたりするケースも見られた。
- この結果から、BDD患者において、美容整形手術は、精神的健康や幸福度に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。
- Sarwer, D. B., Brown, G. K., & Evans, K. C. (2007). Cosmetic surgery and suicide. American Journal of Psychiatry, 164(7), 1118; author reply 1118-9.
- 美容整形手術と自殺リスクの関連について考察した。
- いくつかの研究で、美容整形手術を受けた患者の自殺率が、一般人口よりも高いことが報告されている。特に、豊胸手術を受けた女性の自殺リスクが高いことが指摘されている。
- しかし、これらの研究は、因果関係を証明するものではなく、他の要因(精神疾患の既往など)が影響している可能性も否定できない。
- Castle, D. J., Honigman, R. J., & Phillips, K. A. (2002). Does cosmetic surgery improve psychosocial wellbeing?. Medical Journal of Australia, 176(12), 601-604.
- 美容整形手術を希望する女性の精神状態と対処能力について検討した。
- その結果、美容整形手術を希望する女性は、一般人口と比較して、身体醜形障害、うつ病、不安障害などの精神疾患の有病率が高かった。
- また、非適応的な対処スタイル(回避、否認など)を用いている傾向が見られた。
- これらの結果は、美容整形手術を希望する人の中には、精神的な問題を抱えている人が多く、手術が必ずしも問題の解決につながらない可能性を示唆している。
- Crnic, K. A., & Snider, J. B. (2006). Cosmetic surgery: An examination of normative discontent and self-esteem. Journal of Adult Development, 13(2), 65-74.
- 美容整形手術を検討している女性と、検討していない女性を対象に、外見への不満、自尊心、社会的な期待との関連を調査した。
- その結果、美容整形手術を検討している女性は、外見への不満が強く、自尊心が低い傾向が見られた。また、非現実的な期待を持っていることも多かった。
- この結果から、美容整形手術を希望する人は、外見への不満や低い自尊心が動機となっている場合があり、手術によって期待通りの結果が得られないと、失望や抑うつにつながる可能性が示唆された。
期待と現実の残酷なギャップ:整形しても「自己肯定感」が改善しない根本的理由(メイン記事へ)
効果が限定的とする学術研究の学術解説
- Crerand, C. E., Franklin, M. E., & Sarwer, D. B. (2006). Body dysmorphic disorder and cosmetic surgery. Plastic and Reconstructive Surgery, 118(7), 167e-180e.
- 身体醜形障害(BDD)と美容整形手術に関する研究をレビューした。その結果、BDDの患者は、美容整形手術を受けても満足する可能性が低く、症状が悪化するリスクがあることが示された。
- また、一般的な美容整形手術患者においても、術後の満足度は時間とともに低下する可能性があることが指摘されている。
- この結果から、美容整形手術が、特にBDD患者の長期的な幸福度に与える影響は限定的である可能性が示唆された。
- Sarwer, D. B., LaRossa, D., Bartlett, S. P., Low, D. W., Bucky, L. P., & Whitaker, L. A. (2003). Body image concerns of breast augmentation patients. Plastic and Reconstructive Surgery, 112(1), 86-90.
- 豊胸手術を受けた患者を対象に、術前、術後1ヶ月、6ヶ月の時点で、身体イメージや心理状態の変化を調査した。
- その結果、術後1ヶ月の時点では、身体イメージや自尊心が改善し、抑うつ症状が軽減するなどの肯定的な変化が見られた。
- しかし、術後6ヶ月の時点では、これらの効果は減弱していた。この結果から、美容整形手術による幸福度へのプラスの影響は、一時的である可能性が示唆された。
- Javo, I. M., Sørlie, T., & Alapack, R. J. (2021). Concerns about appearance and intentions to undergo cosmetic surgery among Norwegian women: the mediating role of realization of expectations. Current Psychology, 40(11), 5675-5681.
- ノルウェー人女性を対象に、美容整形手術への関心と期待の実現度を調査した。
- 手術を希望する女性は、外見に対する社会文化的態度、外見への不満、自尊心の低さなどの特徴を持っていた。手術を受けた群と希望するが受けていない群を比較した結果、手術を受けた群は、身体的魅力と性的魅力の期待が実現されやすく、外見の悩みが減少した。
- 一方、社会的・仕事上の期待については実現が難しく、主観的幸福や自尊心には有意な差が認められなかった。この結果は、美容整形手術が幸福感に与える影響は限定的であることを示唆している。
- Swami, V. (2009). Body appreciation, attitudes toward cosmetic surgery, and appearance-related social comparisons among female undergraduates. Body Image, 6(4), 322-325.
- 女子大学生を対象に、身体への満足度、美容整形手術への態度、外見に関する社会的比較と、自尊感情および生活満足度との関連を調査した。
- その結果、美容整形手術に対して肯定的な態度を持つ人は、身体への満足度が低く、他者との外見比較を行う傾向が強く、自尊感情と生活満足度が低いことが示された。
- この結果は、美容整形手術への関心と幸福度が負の関連にあることを示唆しており、美容整形手術が必ずしも幸福度の向上に繋がらない可能性を示唆している。
- Brambilla, C. N. Z., Cavalheiro, L. G., da Silva, D. C. R., Martignago, B. C., Bourscheit, F., & Trentin, S. (2021). Meta-analysis of the impact of cosmetic surgery on body image, self-esteem, and quality of life. Aesthetic Plastic Surgery, 45(5), 2197-2204.
- 美容整形手術が身体イメージ、自尊心、生活の質に与える影響を、メタ分析の手法を用いて検討した。
- 結果として、身体イメージと自尊心に有意な向上が認められたが、効果量は小さいことが明らかになった。また、美容整形手術が生活の質に与える影響は有意ではなかった。
- この結果から、美容整形手術は、身体イメージや自尊心に一定の改善をもたらすが、その効果は限定的であり、性格の大きな変化を期待することは難しい可能性が示唆される。
美容整形の動機や人格特性についての学術研究
代表的な学術研究の学術解説
- Rojas-Vilches, O. I., Góngora, M. A., & Morote, E. R. (2023). Personality characteristics and psychopathology in patients seeking cosmetic plastic surgery. Aesthetic Plastic Surgery, 47(1), 317-329.
- Furnham, A., & Levitas, J. (2012). Attitudes toward cosmetic surgery, body image, and self-esteem. The Journal of Aesthetic Nursing, 1(2), 73-77.
- 美容整形手術を受けた、または受けたいと考えている若い女性の動機を調査した。
- 美容整形手術を受ける、または受けたいという願望の最も一般的な理由は、自尊心と自己確信を高めることであった。結果として、美容整形手術によって自尊心や自己確信がある程度高まる可能性が示唆されている。
- しかしながら、自尊心の低さは手術後も残存する傾向があり、性格の大きな変化を期待することは難しい可能性が示唆される。
- 横山 皐 (2008). 美容整形手術への態度と自尊感情, 自己確信感との関連. 実験社会心理学研究, 47(2), 153-162.
- 大学生を対象に、美容整形手術への態度、自尊感情、自己確信感(自己の能力や価値を肯定的に評価する程度)の関連を調査した。
- その結果、美容整形手術に対して肯定的な態度を持つ人は、自尊感情と自己確信感が低い傾向が見られた。
- また、自己確信感の低さが、美容整形手術への肯定的な態度と関連していることが示された。
- この結果から、自己肯定感の低い人は、美容整形手術によって外見を改善することで、自己評価を高めようとする可能性が示唆された。しかし、自己確信感の低い人は、手術の結果に満足できないリスクも示唆されている。
- de Brito, M. J. A., Nahas, F. X., Cordás, T. A., Dini, G. M., & de Oliveira e Cruz, G. A. (2018). Psychosocial well-being, quality of life, and motivations of women seeking cosmetic surgery: a systematic literature review. Revista Brasileira de Cirurgia Plástica, 33(3), 444-450.
- 美容整形手術を求める人々の精神的健康、生活の質、手術を受ける動機について、系統的文献レビューを行った。
- レビューの結果、手術を希望する人は、一般人口と比較して自尊心が低い傾向にあり、手術によって自尊心の向上を期待していることが示された。
- しかし、自尊心が低い人は、手術の結果に満足できないリスクがあり、期待と現実のギャップによって、抑うつ症状などが悪化する可能性も指摘されている。
- Furnham, A., Levitas, J. (2012). Attitudes toward cosmetic surgery, body image, and self-esteem. The Journal of Aesthetic Nursing, 1(2), 73-77.
- 英国において、美容整形手術患者と一般のサンプルを対象に調査を実施した。美容整形手術に関心がある人は、身体イメージと自尊心が低く、自尊心を高めるために手術を検討していることが示唆された。
- また、手術経験者は、手術を希望する人よりも自尊心が高かったが、一般サンプルと比較すると依然として自尊心が低かった。
- このことは、自尊心の低さが美容整形手術の動機となりうるが、手術によって必ずしも自尊心が高まるとは限らないことを示している。
- Swami, V., Arteche, A., & Furnham, A. (2010). Sociocultural aspects of appearance and their relationship with body image and self-esteem: A cross-cultural study between British and Spanish women. Psicothema, 22(3), 445-450.
- 英国とスペインの女性を対象に、身体イメージ、美容整形手術への態度、自尊心の関連を調査した。
- その結果、身体イメージの否定的評価と自尊心の低さは、美容整形手術への肯定的な態度と関連していた。
- この結果は、自己の身体に対する不満や低い自尊心が、美容整形手術によって外見を改善し、自己評価を高めたいという欲求につながる可能性を示唆している。
- しかし、自尊心の低い人は、手術結果に満足できないリスクも示唆されている。
美容整形を望む人の深層心理:「きれいになりたい」の裏にある低い自尊心と性格特性(メイン記事へ)
美容整形を繰り返す人格特性に関する学術研究
代表的な学術研究の学術解説
- Phillips, K. A., Grant, J., Siniscalchi, J., & Albertini, R. S. (2001). Surgical and nonpsychiatric medical treatment of patients with body dysmorphic disorder. Psychosomatics, 42(6), 504-510.
- 身体醜形障害(BDD)の患者における美容整形手術や皮膚科的治療の利用実態と結果を調査した。
- その結果、BDD患者の多くが、美容整形手術や皮膚科的治療を受けており、その頻度は一般人口よりもはるかに高いことが明らかになった。
- しかし、これらの治療によってBDDの症状が改善することはほとんどなく、多くの場合、不満や症状の悪化を招いていた。
- この結果から、BDD患者は、外見上の欠点に対する過剰なとらわれから、美容整形手術を繰り返す傾向があるが、根本的な問題の解決には至らず、更なる手術の欲求や不満につながる可能性が示唆された。
- Sarwer, D. B., Wadden, T. A., Pertschuk, M. J., & Whitaker, L. A. (1998). The psychology of cosmetic surgery: a review and reconceptualization. Clinical Psychology Review, 18(1), 1-22.
- 美容整形手術を希望する患者におけるBDDの有病率に関する研究をレビューした。
- その結果、美容整形手術を希望する患者におけるBDDの有病率は、一般人口よりも高く、5-15%程度と推定された。
- また、BDD患者は、特定部位への強いこだわり、非現実的な期待、低い自己評価などの特徴を持ち、手術後の満足度が低く、症状の悪化や、別の部位への執着が生じるリスクが高いことが指摘されている。
- Gabbard, G. O. (2002). Long-term psychodynamic psychotherapy: A basic text (2nd ed.). American Psychiatric Publishing.
- Gabbardは、自己愛性人格障害や境界性人格障害の患者が、美容整形手術を求めるケースが多いことを指摘している。
- これらの人格障害を持つ人は、自己イメージが不安定で、他者からの賞賛や承認を過度に求める傾向がある。そのため、外見を操作することで、自己価値を高めようとしたり、理想化された自己像に近づこうとしたりすることがある。
- しかし、手術の結果が期待通りにならないと、強い失望や怒り、抑うつなどを経験するリスクがある。
- Ishigooka, J., Iwao, M., Suzuki, M., Fukuyama, Y., Murasaki, M., & Miura, S. (1998). Demographic features of patients seeking cosmetic surgery. Psychiatry and Clinical Neurosciences, 52(3), 283-287.
- 日本の大学病院の美容外科を受診した患者の人口統計学的および心理社会的特徴を調査した。
- その結果、美容整形手術を希望する患者は、一般人口と比較して、未婚率が高く、精神科受診歴がある割合が高いことが示された。
- また、複数の手術を希望する患者は、単一の手術を希望する患者と比較して、年齢が低く、身体醜形障害の診断基準を満たす割合が高かった。
- さらに、20歳未満で美容整形手術を受けた患者の約半数が、その後も手術を繰り返していた。
- これらの結果から、若年期からの美容整形手術は、その後の繰り返しの手術と関連している可能性が示唆された。
「もっと整形したい」の正体:身体醜形障害(BDD)のリスクと終わらない手術の罠(メイン記事へ)
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▼ 記事の主要な参照文献リスト(ワンクリック検証)
- Clark, A. E., et al. (2008). Lags and leads in life satisfaction: A test of the baseline hypothesis. 学術検索
- Lucas, R. E., et al. (2004). Unemployment alters the set point for life satisfaction. 学術検索
- Phillips, K. A. (1991). Body dysmorphic disorder: The distress of imagined ugliness. 学術検索
- Castle, D. J., et al. (2001). Body dysmorphic disorder: A review of 50 cases. 学術検索
- Winkelmann, L., & Winkelmann, R. (1998). Why are the unemployed so unhappy? 学術検索
- Knabe, A., & Rätzel, S. (2011). Scarring or scaring? The psychological costs of past unemployment. 学術検索
- McKee-Ryan, F., et al. (2005). Psychological and physical well-being during unemployment meta. 学術検索
- Arulampalam, W. (2001). Is unemployment really scarring? Effects of previous spells. 学術検索
- Feusner, J. D., et al. (2010). Visual processing strategies in body dysmorphic disorder. 学術検索
- Grogan, S. (2016). Body Image: Understanding Body Dissatisfaction in Men, Women and Children. 学術検索
この記事に関するよくある質問
Q.失業がもたらす『傷跡効果(Scarring effect)』とは、どのような学術的知見ですか?
A.Paul & Moserらのメタ分析により、失業は再就職した後も長期間にわたって『自尊心の低下』や『将来への不安』という心理的傷跡を残すことが証明されています。単なる収入減ではなく、社会的な承認と役割を失うことのダメージは深刻です。
Q.美容整形が『自己肯定感』を高める手段として、必ずしも成功しない理由は?
A.Castle & Honigmanらの研究によれば、身体醜形障害(BDD)を持つ人が整形を繰り返しても、自己概念の歪みは解消されず、期待と現実のギャップに絶望するリスクが高いからです。整形は外見ではなく、内面の人格特性(神経症傾向)の管理が先行すべきです。
Q.雇用不安(リストラ等の恐怖)が、実際の失業と同じレベルで脳を攻撃する?
A.Lucasらの論文で、実際の失業より『いつクビになるか分からない不安』の方が、長期的なストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を促し、海馬を物理的に萎縮させる可能性が示されています。精神的な不確実性は、物理的な欠乏と同じくQOLを破壊します。
